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機能で解決できるか

打刻方法は、現場のITスキルで決まる。パソコンを使わない職場で何が起きるか

勤怠管理システムの比較表を見ると、どれも似たような機能が並んでいます。差がつくのは機能ではなく、毎日打刻する人がその操作をできるかどうかです。導入が失敗するとき、原因はたいてい機能不足ではありません。

最終更新 2026-08-12/執筆・確認 TechJapan合同会社(執筆・確認体制

3人の別々の人が、別々の操作をする

勤怠管理システムを評価するとき、多くの人は自分が触る画面だけを見ます。実際には3つの立場があり、求められるITスキルがまったく違います。

選定する人は3番目の立場にいることが多い。だから1番目の負担が見えません。ここが導入後の齟齬になります。

  • 打刻する従業員: 毎日操作する。人数が最も多く、ITスキルの幅も最も広い
  • 勤怠を締める担当者: 月に数回、エラーを見つけて直す。表計算の知識があると楽になる
  • 初期設定をする人: 最初の1回だけ。就業規則を読んで設定に落とす作業で、労務の知識が要る

打刻方法ごとの、従業員側のハードル

ハードルが低い順に並べます。判定材料は「本人が覚えることの数」と「本人の端末が要るか」です。

注意したいのは、これが製品の優劣ではないことです。オフィス勤務で全員にPCが支給されている職場なら、PCブラウザ打刻のハードルは実質ゼロです。同じ方法でも職場によって難易度が変わります。

  • 紙のタイムカード: 覚えることゼロ。今までと同じ。ただし集計は誰かが別途やる必要がある
  • ICカード・顔認証・共有タブレット: かざす、立つだけ。カードを忘れる問題は残る
  • PCブラウザ打刻: IDとパスワードを覚えて入力する。パスワードを忘れる問い合わせが定期的に発生する
  • 個人スマホのアプリ: アプリのインストール、初回ログイン、通知の許可。私物を業務に使うことへの抵抗も出る
  • GPS付きスマホ打刻: 上記に加えて位置情報の許可。OSの更新で許可が外れると打刻できなくなる

個人スマホを使う方式は、端末を持っていない人が1人でもいると運用が成立しません。導入前に全員が業務で使えるスマートフォンを持っているかを確認してください。持っていない人向けに共有端末を1台置く、という併用が現実的な着地になることが多いです。

11製品の打刻方法

各社の公開情報で確認できた打刻方法です。多くの製品が複数の方法を用意しており、職場ごとに使い分けられます。選択肢の多さ自体は各社の差別化点になっています。

打刻方法を1つに絞る必要はありません。事務所はPC、現場はICカード、直行直帰はスマホ、という併用が可能な製品がほとんどです。

  • PC・スマホ・タブレット・ICカード・生体認証を広く揃える: HRMOS勤怠、KING OF TIME、freee勤怠管理Plus、ジョブカン勤怠管理、タッチオンタイム、レコル、マネーフォワード クラウド勤怠Plus
  • PC・スマホ・タブレット・ICカードを揃える: ジンジャー勤怠、マネーフォワード クラウド勤怠
  • 顔写真・パスコードなど店舗運用向けを揃える: スマレジ・タイムカード
  • 紙のタイムカードを撮影して読み取る方式のみ: パシャ勤怠(デジタル打刻機能は搭載していない)

初期設定は、機能の多さに比例して重くなる

機能が多い製品ほど、最初に決めることが増えます。ここが導入の山場です。

所定労働時間、休憩の自動控除、締め日、割増率、休日の区分、有給の付与ルール、承認の経路。これらを就業規則から読み取って設定に落とす作業になります。就業規則が古いまま実態と合っていない会社では、まず就業規則の確認から始まります。

変形労働時間制を使っている場合はさらに重くなります。1年単位なら対象期間の労働日と労働時間を特定する必要があり、カレンダーを1年分登録する作業が発生します。この作業量は製品を変えても減りません。制度そのものが持つ重さだからです。

初期設定の代行サービスを用意している製品もあります。ジョブカン勤怠管理は有料の初期設定代行サポートがあると公開情報に記載があります。KING OF TIME もプレミアムサポートの記載があります。ただし両社とも金額は公開されていないため、見積もりを取る必要があります。

サポートに電話があるかどうかは、思ったより効く

パソコンをあまり使わない職場では、チャットやメールでのやり取り自体が負担になります。画面のどこを見ているかを文章で説明できないためです。

ジョブカン勤怠管理は電話・メール・チャットを無料で受け付けると公開情報に記載しています。KING OF TIME は電話(予約制)とチャットの記載があります。導入初期に詰まったとき、電話で聞ける窓口があるかは実務上の差になります。

他社については、公開情報でサポート形態と費用まで確認できたものだけを掲載しています。記載を確認できなかった製品は、問い合わせて確認してください。

拡張性は、給与ソフトとの接続方法で見る

勤怠は単体で完結しません。締めた後、必ず給与計算に渡します。ここの接続方法が運用の手間を決めます。

API連携があれば、締めた後にボタン一つで給与側に反映されます。CSV出力しかない場合は、出力して取り込む手作業が毎月発生し、項目の並びが合わないと調整も要ります。

同じベンダーの給与ソフトを使う組み合わせが最も滑らかです。ジョブカン勤怠管理とジョブカン給与計算、ジンジャー勤怠とジンジャー給与、freee勤怠管理Plusとfreee人事労務、マネーフォワードの勤怠と給与。すでに給与ソフトが決まっているなら、それに合う勤怠を選ぶほうが結果的に安く済みます。

他社の給与ソフトとつなぐ場合は、CSVの出力形式を自社の取込形式に合わせて作れるかを確認してください。マネーフォワード クラウド勤怠Plus は利用中のソフトの取込形式に合わせた出力フォーマットを作成できると記載しています。

システムでは解決しないこと

打刻方法を変えても、打刻しない人は打刻しません。ここは製品の問題ではなく運用の問題です。

そして、そもそも自社の労働時間制度をどう設計するかは製品選定の前段にあります。変形労働時間制を使うべきか、フレックスを入れるべきか、固定残業代をどう設計するか。これらは就業規則と労使協定の話で、どの製品を選んでも決まりません。

勤怠に関わる相談1,891件のうち639件(33.8%)は、この種の解釈と個別判断でした。製品選びの前に、自社の制度が実態と合っているかを確認してください。

この記事の要点

  • 打刻する人・締める人・設定する人でITスキルの要求が違う。選定者は3番目にいるので1番目の負担が見えにくい
  • 個人スマホ方式は、端末を持っていない人が1人でもいると運用が成立しない
  • 打刻方法は併用できる。事務所はPC、現場はICカード、という分け方が現実的
  • 初期設定の重さは機能の多さに比例する。変形労働時間制があると1年分のカレンダー登録が発生する
  • パソコンをあまり使わない職場では、電話で聞ける窓口があるかが効く
  • 給与ソフトが決まっているなら、それに合う勤怠を選ぶほうが結果的に安い

よくある質問

従業員の平均年齢が高く、スマホを持っていない人もいます。何を選べばよいですか。

ICカードや顔認証など、本人が覚えることが少ない方法を持つ製品が向きます。共有端末を職場に1台置く形になるため、出退勤時に人が集中しないかも確認してください。打刻自体をデジタル化しない選択もあります。

初期設定にどのくらいかかりますか。

設定項目の数と、就業規則が実態と合っているかで大きく変わるため、一律には言えません。変形労働時間制を使っている場合はカレンダーの登録作業が加わります。代行サービスの有無と費用は各社に見積もりを取ってください。

パソコンが苦手な担当者でも月次の締めができますか。

日々の運用は未取得者やエラーの一覧を見るだけで済む製品が多く、設定が終われば負担は下がります。ただし修正が必要になったときの操作は製品ごとに差があるため、無料お試し期間中に実際の締め作業を一度通してみてください。

次にやること

無料お試しを申し込む前に、職場で最もパソコンを使わない人を1人思い浮かべてください。その人が毎日その操作をできるかが判断基準です。試用では管理画面ではなく、まず打刻画面をその人に触ってもらってください。

ここから先は個別判断の領域です。

就業規則との整合、労使協定の設計、自社の勤務実態への当てはめは、製品を変えても解決しません。書類審査を通った社労士事務所を、料金と対応エリアで比較できる一覧をご用意しています。

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本記事は TechJapan合同会社 の責任で執筆・確認しています。社会保険労務士による監修は受けていません。法令の条番号と条文の内容は公開時点で e-Gov の現行条文と機械照合していますが、自社の事案への当てはめは社労士にご確認ください。

本記事は制度の概要と実務上の論点を整理したものです。個別の事案への当てはめは、就業規則・労使協定・実際の勤務実態によって結論が変わります。法令の記述は掲載時点で e-Gov の現行条文と機械照合しています。執筆・確認体制について