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はじめての法定三帳簿。労働者名簿・賃金台帳・出勤簿を整える手順と保存年限

労務の担当になって最初に整える書類は、労働者名簿・賃金台帳・出勤簿の3つです。あわせて法定三帳簿と呼びます。従業員がひとりでもいれば、会社の規模に関係なく、雇い入れたその時から作成義務があります。就業規則より先に、こちらが要ります。この記事は、初めて三帳簿を整える人向けに、何を・いつ・どの項目で作り、何年保存するかを実行順で示します。当社の分類でも、記録・証跡に関する相談は勤怠スコープ1,891件のうち139件。地味に見えますが、賃金の計算も、行政対応も、すべてこの3つの書類から始まります。

最終更新 2026-08-20/執筆・確認 TechJapan合同会社(執筆・確認体制

まず全体像。作るのは3つ、順番はこのとおり

三帳簿は互いにつながっています。労働者名簿が「誰を雇っているか」、出勤簿が「何時間働いたか」、賃金台帳が「いくら払ったか」を受け持ち、数字はこの順で流れます。だから作る順番も同じにするのが早い。

先に外枠だけ決めてしまいましょう。様式は法定されていません。記載事項さえ揃っていれば、Excelでも給与ソフトの出力でも構いません。

  1. 労働者名簿を作る。雇い入れた日に、労働者ごとに1枚(日々雇い入れる人は除く)
  2. 出勤簿を整える。毎日の始業・終業が分かる記録。紙のタイムカードでも打刻データでも可
  3. 賃金台帳を作る。賃金を支払うたびに遅滞なく記入。労働時間数まで書く
  4. 保存ルールを決める。原則5年・当分の間3年。起算日は書類ごとに確認する

STEP1 労働者名簿。雇入れ日に1枚、変更があれば遅滞なく

根拠は労働基準法第107条です。事業場ごとに、労働者ごとに調製します。記載事項は氏名・生年月日・履歴に加え、労働基準法施行規則第53条が定める性別・住所・従事する業務の種類・雇入れの年月日・退職の年月日とその事由(解雇の場合はその理由)・死亡の年月日とその原因です。

但書きを2つ落とさないでください。第一に、日々雇い入れられる人は名簿の対象外です。第二に、常時30人未満の事業場では「従事する業務の種類」の記入は省略できます(同規則第53条)。

つまずきやすいのは退職後の更新です。退職の年月日と事由は、辞めた後に書く欄なので、在籍中のフォーマットを埋めた時点では空欄が正しい。退職処理のチェックリストに「名簿の最終記入」を入れておくと漏れません。

STEP2 賃金台帳。支払の都度、労働時間数まで書く

根拠は労働基準法第108条と労働基準法施行規則第54条です。賃金を支払うたびに、遅滞なく記入します。記載事項は氏名・性別・賃金計算期間・労働日数・労働時間数・時間外や休日・深夜の労働時間数・基本給や手当の種類ごとの額・控除の項目と額です。

名簿と違い、日々雇い入れる人にも賃金台帳は必要です(賃金計算期間の記入だけ不要)。

実務で最も多い不備は「労働時間数」の欄です。給与明細の体裁は整っているのに、時間外・深夜の内訳時間が台帳に載っていないケースが目立ちます。出勤簿の時間数と賃金台帳の時間数が突き合わせで一致しない台帳は、要件を満たしません。給与ソフトから出力する場合は、時間項目が出力に含まれているかを最初に確認してください。

STEP3 出勤簿。媒体は自由、始業・終業が分かることが条件

出勤簿そのものを名指しする条文はありません。ただし、労働時間の状況を客観的な方法で把握することは2019年4月から全ての事業者の義務とされ、その記録は労働基準法第109条の「労働関係に関する重要な書類」として保存義務がかかります。

媒体は問いません。紙のタイムカード、ICカードの打刻データ、勤怠システムの記録、手書きの出勤簿、どれでも要件は満たせます。

足りないのは中身の方です。出社の有無だけを丸印で付ける形式では、労働時間数が出せません。始業時刻と終業時刻が残る形にしてください。休憩を除いた実労働時間が計算できることが、賃金台帳の「労働時間数」欄につながる条件です。

打刻の媒体を変える必要はありません。いま紙のタイムカードなら、そのまま三帳簿の要件は満たせます。変えるべきなのは媒体ではなく、始業・終業・休憩が数字で残っているかどうかです。

保存は原則5年、当分の間3年。起算日を間違えない

保存期間は労働基準法第109条が5年間と定めています。ただし労働基準法第143条の経過措置で、当分の間は3年間とされています。この「当分の間」がいつ終わるかは決まっていません。だから実務の答えは1つです。今から5年で保存する。保存を延ばす追加コストはほぼゼロで、短くして困る場面だけが存在します。

起算日は書類ごとに違い、労働基準法施行規則第56条が定めています。労働者名簿は労働者の死亡・退職・解雇の日、賃金台帳は最後の記入をした日、出勤簿などの労働関係の重要書類はその完結の日です。「作成日から」ではない点に注意してください。

名簿・台帳を調製しない、記載事項が欠けている、といった違反は労働基準法第120条第1号の罰金(30万円以下)の対象です。金額の大小より、是正勧告の起点になることの方が実務では痛い。

ここまでは自分でできる。ここからは社労士

三帳簿の整備そのものは、この記事の手順で完結します。書式も市販の様式も要りません。

ただし、次のどれかに当てはまったら、その先は制度設計の領域です。帳簿を正しく付けていても、仕組み側を組み間違えると毎月同じ手戻りが出ます。1つでも当てはまるなら、帳簿の話と切り分けて、社会保険労務士に制度側の設計を相談する段階です。

  • 常時10人以上(労働基準法第89条が就業規則の作成・届出を義務づける人数)に達した
  • 手当の新設・変形労働時間制の導入など、賃金や労働時間の制度自体を変えようとしている
  • 事業場が複数になり、帳簿の様式や運用が事業場ごとにバラバラになっている
  • 過去の帳簿に数か月以上の欠落が見つかった
  • 出勤簿と賃金台帳の労働時間数が、突き合わせても合わない状態が続いている

この記事の要点

  • 法定三帳簿(労働者名簿・賃金台帳・出勤簿)は規模に関係なく、雇入れと同時に義務になる
  • 賃金台帳には労働時間数まで書く。出勤簿と数字が合わない台帳は要件を満たさない
  • 保存は原則5年・当分の間3年。起算日は「作成日」ではなく書類ごとに決まっている
  • 媒体は紙でもデータでもよい。始業・終業時刻が数字で残ることが条件
  • 就業規則・変形労働・複数事業場など制度設計に踏み込む変化が起きたら、社労士の領域

よくある質問

三帳簿はExcelや勤怠システムのデータのままでよいですか。

構いません。紙で保存する義務はなく、求められたときにすぐ出力できる状態であれば電子のままで要件を満たします。ただし打刻データと給与データが別のシステムにある場合、労働時間数が賃金台帳側に載っているかを先に確認してください(賃金台帳の記載事項は労働基準法施行規則第54条)。

アルバイトやパートにも必要ですか。

必要です。三帳簿は雇用形態を問いません。労働者名簿だけは日々雇い入れられる人が対象外ですが、賃金台帳は日雇いでも必要です(賃金計算期間の記入だけ不要になります)。

決まった様式はありますか。

ありません。記載事項が揃っていれば書式は自由です。厚生労働省の様式例をそのまま使う必要はなく、給与ソフトや勤怠システムの出力でも、規則が求める項目が入っていれば足ります。

次にやること

今日、直近1か月分の出勤簿と賃金台帳を、誰かひとり分だけ突き合わせてください。労働時間数が両方で一致していれば、あなたの三帳簿は形になっています。合わないなら、どちらの数字が実態かを確かめるところが出発点です。

ここから先は個別判断の領域です。

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本記事は TechJapan合同会社 の責任で執筆・確認しています。制度の概要と実務上の論点までを扱い、個別の事案への当てはめは社会保険労務士など専門家の領域として線引きしています。

本記事は制度の概要と実務上の論点を整理したものです。個別の事案への当てはめは、就業規則・労使協定・実際の勤務実態によって結論が変わります。法令の記述は掲載時点で e-Gov の現行条文と機械照合しています。執筆・確認体制について