時間単位の有給は「年5日」に数えられるのか。制度を入れる前に決めること
「1時間だけ有給を取れるようにしたい」。従業員には歓迎される制度ですが、導入すると年5日の取得義務の管理が一段複雑になります。相談58件に対して平均5.24件のリアクションがつく、判断の割れる論点です。
最終更新 2026-08-11/執筆・確認 TechJapan合同会社(執筆・確認体制)
この論点の「もめ方」
相談 58件・1件あたりの平均リアクション 5.24(全体平均 4.38)。
制度としては新しくないのに、いまだに判断が割れています。年5日の取得義務との関係が直感に反するのが主な理由です。
労使協定がないと導入できない
時間単位年休は、就業規則に書けば使えるようになる制度ではありません。労働基準法第39条第4項は、事業場の過半数労働組合(ないときは過半数代表者)との書面による協定で定めた場合に、労働者が時間を単位として請求できるとしています。
協定で定めるのは、対象労働者の範囲、時間単位で与えることができる日数、1日分に相当する時間数などです。上限は年5日分。ここでいう5日は「日数」であって、5時間ではありません。
年5日の取得義務には数えられない
ここが最も誤解される点です。労働基準法第39条第7項は、年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者について、そのうち5日を使用者が時季を指定して取得させることを義務づけています。この5日に、時間単位で取得した分は含まれません。
つまり時間単位年休を活用している従業員ほど、日数ベースでの取得が進まず、年5日の未達に近づきます。制度を入れて満足度は上がったが、義務の未達者が増えた、という状態が起きます。
半日単位の年休は年5日の取得義務にカウントできます(0.5日として計算)。時間単位だけが別扱いです。この差が、実務で最も混乱を生みます。
導入前に決めておく4つのこと
協定を結ぶ前に、社内で先に決めておかないと後から揉めます。特に1日分に相当する時間数の設定は、所定労働時間が7時間30分のような端数のある会社で必ず問題になります。この場合は時間単位に切り上げて8時間として扱います。切り捨てると、労働者に不利になるためです。
- 対象者の範囲(全員か、業務の性質上難しい職種を除くか)
- 1日分に相当する時間数(所定労働時間に端数があれば時間単位に切り上げる)
- 1回に取得できる時間数の単位(1時間単位か、2時間単位も認めるか)
- 年5日の取得義務をどう管理するか(時間単位の消化は義務の履行にならない前提で)
管理コストは確実に上がる
残日数が「12日と3時間」のような表記になり、繰越の計算も日と時間の両方を持つことになります。紙やスプレッドシートで管理している会社では、ここで破綻することが多い。
年5日の取得義務の進捗も、日数ベースと時間ベースを分けて持つ必要があります。導入するなら、勤怠管理システム側が時間単位年休の残数管理と、年5日の進捗管理を別建てで持てるかを先に確認してください。対応していない製品では、結局手作業の管理表が残ります。
この記事の要点
- 導入には労使協定が必須。就業規則だけでは使えない
- 上限は年5日分(5時間ではない)
- 時間単位で取得した分は年5日の取得義務にカウントされない
- 半日単位は0.5日としてカウントできる。この差が混乱の元
- 残数管理が日+時間の2軸になるため、システム側の対応可否を先に確認する
よくある質問
年5日にカウントされないなら、導入しないほうがよいですか。
取得しやすさは確実に上がるので、制度自体の価値は否定されません。問題は年5日の管理を別建てで持てるかどうかです。管理の手段がないまま導入すると、未達に気づくのが期限直前になります。
所定労働時間が7時間30分の場合、1日分は何時間ですか。
時間単位に切り上げて8時間として扱います。7時間として扱うと、8時間分の休暇を7時間分の権利で消化させることになり、労働者に不利になるためです。
労使協定は届け出が必要ですか。
時間単位年休の労使協定は締結が要件で、行政官庁への届出は求められていません。ただし協定の内容は就業規則にも反映させ、従業員が参照できる状態にしておく必要があります。
次にやること
導入を検討しているなら、先に「年5日の取得義務の進捗を、日数ベースで一覧できる仕組みがあるか」を確認してください。それが無い状態で時間単位年休を入れると、義務の未達が見えなくなります。協定の内容は社会保険労務士に確認したうえで締結してください。
ここから先は個別判断の領域です。
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本記事は TechJapan合同会社 の責任で執筆・確認しています。社会保険労務士による監修は受けていません。法令の条番号と条文の内容は公開時点で e-Gov の現行条文と機械照合していますが、自社の事案への当てはめは社労士にご確認ください。
本記事は制度の概要と実務上の論点を整理したものです。個別の事案への当てはめは、就業規則・労使協定・実際の勤務実態によって結論が変わります。法令の記述は掲載時点で e-Gov の現行条文と機械照合しています。執筆・確認体制について