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もめる論点

有給の基準日を統一したい。その年だけ起きる二重付与のコスト

入社日がバラバラのまま有給を管理するのは、担当者にとって面倒な作業です。基準日を4月1日に統一したくなるのは自然ですが、統一する年だけコストが跳ね上がります。相談139件・平均5.03リアクションと、件数と紛糾度の両方が高い論点です。

最終更新 2026-08-11/執筆・確認 TechJapan合同会社(執筆・確認体制

この論点の「もめ方」
相談 139件・1件あたりの平均リアクション 5.03(全体平均 4.38)。 件数もリアクション数も多い数少ない論点です。多くの会社が直面し、しかも正解が1つに決まりません。

そもそも法律はどう定めているか

労働基準法第39条第1項は、雇入れの日から6か月継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した労働者に10労働日の年次有給休暇を与えることを定めています。第2項は、以降1年ごとに勤続年数に応じて日数を加算することを定めています。

これは最低基準です。基準日を統一して前倒しで付与すること自体は、労働者に有利な取扱いなので適法です。問題は適法かどうかではなく、コストを織り込んだかどうかにあります。

統一初年度に何が起きるか

10月1日入社の人は、本来なら翌年4月1日に10日が付与されます。基準日を4月1日に統一するなら、この人には入社から6か月経つ前の4月1日に10日を与えることになります。半年前倒しです。

前倒しで付与した日数は、後から取り消せません。統一の年は、全社員の付与タイミングが最大で1年近く前倒しになり、その分の休暇が集中して消化されます。「思ったより休まれた」と慌てる会社をよく見ますが、これは統一の必然的な結果です。

コストは「前倒しになる月数の合計 × 1人あたりの平均日額」で概算できます。統一を決める前に、入社月の分布から必ず先に計算してください。判断が変わることがあります。

年5日の取得義務は基準日ごとに走る

労働基準法第39条第7項は、年10日以上付与される労働者について、付与日から1年以内に5日を取得させることを義務づけています。基準日を統一すると、この1年の区切りも全社員で揃うため、管理は楽になります。

ただし統一する年は、旧基準日から新基準日までの期間の扱いを決めておく必要があります。期間が重なる場合の按分について厚生労働省が考え方を示していますが、自社の付与ルールによって結論が変わるため、統一の設計は社会保険労務士に確認するのが確実です。

統一しないという選択

基準日を入社日のままにしておけば、二重付与のコストは発生しません。管理の手間だけが残ります。

そして、その手間は勤怠管理システムで解消できる部分です。入社日ベースの自動付与と、年5日の未取得者アラートに対応している製品なら、基準日がバラバラでも管理の負担はほぼ変わりません。「管理が面倒だから統一する」という動機なら、統一のコストとシステム導入のコストを並べて比べる価値があります。

この記事の要点

  • 基準日の統一・前倒し付与は適法。法定は最低基準なので上回る分は問題ない
  • 統一初年度は前倒し分の付与が集中する。前倒しした日数は取り消せない
  • 統一を決める前に、入社月の分布からコストを概算する
  • 「管理が面倒」が動機なら、統一のコストとシステム導入のコストを比べる

よくある質問

基準日を統一したあと、入社直後の人の出勤率8割はどう判定しますか。

前倒しで付与する場合、出勤率の算定期間が短くなります。この期間を全期間出勤したものとみなす取扱いが一般的ですが、自社の規定でどう定めるかを先に決めておく必要があります。

統一を途中でやめて入社日ベースに戻せますか。

一度前倒しで付与した日数は取り消せないため、実質的に戻すことは困難です。統一は不可逆な変更として扱ってください。

パート・アルバイトも統一の対象になりますか。

週の所定労働日数が少ない従業員には比例付与が適用されます(労働基準法第39条第3項)。統一する場合は比例付与の日数計算も同時に前倒しになるため、対象に含めるかを個別に決めてください。

次にやること

統一を検討しているなら、まず入社月の分布を出して前倒しになる月数の合計を計算してください。そのうえで、統一のコストと、入社日ベースのまま自動付与できるシステムの費用を比べます。統一の設計自体は社会保険労務士に確認してから実行してください。

ここから先は個別判断の領域です。

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本記事は TechJapan合同会社 の責任で執筆・確認しています。社会保険労務士による監修は受けていません。法令の条番号と条文の内容は公開時点で e-Gov の現行条文と機械照合していますが、自社の事案への当てはめは社労士にご確認ください。

本記事は制度の概要と実務上の論点を整理したものです。個別の事案への当てはめは、就業規則・労使協定・実際の勤務実態によって結論が変わります。法令の記述は掲載時点で e-Gov の現行条文と機械照合しています。執筆・確認体制について